「超加工食品って、寿命にも影響するんでしょうか?」
そんな少しドキッとする疑問を、すずちゃんが投げかけます。
すずちゃん食べすぎやすいとか、やめにくいって話は分かってきたけど……
それがずっと続いたら、体にはどんな影響があるのかな?



いいところに気づいたね。
実はその“続いた先”を調べた研究もあるんだ。
これまでの記事では、
超加工食品が
- 意志とは関係なく食べすぎやすいこと
- 咀嚼が減り、食べるスピードが速くなること
- 報酬系を刺激し、やめにくく感じる理由
といった“短期〜中期のメカニズム”を見てきました。
では──
その状態が何年も続いた場合、健康にはどんな影響があるのでしょうか?
今回紹介するのは、
フランスの中年成人約4万人を長期間追跡した前向きコホート研究です。
超加工食品の摂取割合と、死亡リスクとの「関連」を調べたもので、
医学誌 JAMA Internal Medicine に掲載されています。
大切なのは、この研究が
「超加工食品を食べると必ず寿命が縮む」
と断定するものではない、という点です。
一方で、
摂取割合が高い人ほど、リスクが段階的に高くなる関連が見られた
という結果も報告されています。
この記事では、
超加工食品を怖がらせるためではなく、
- この研究で「何が分かったのか」
- 「どこまで言えて、どこからは言えないのか」
- 私たちは日常生活で、どう受け止めればよいのか
を、論文の内容に沿って丁寧に整理していきます。



“寿命に影響する?”という問いは重たいけど、
正しく知れば、必要以上に不安になる必要はないよ。



うん。事実と想像をちゃんと分けて考えたいね。
それでは、
超加工食品と死亡リスクの関係を調べた、この大規模研究の中身を
一緒に見ていきましょう。
この研究はどんな内容?(研究デザインと評価方法)
この研究は、フランスで行われた大規模な前向きコホート研究です。
中年層の男女を中心に、日常的な食事内容と長期的な死亡リスクとの関連が調べられました。
● 食事内容の評価方法
参加者は、
ウェブベースの24時間食事記録を繰り返し提出しました。
この記録は1回限りではなく、
ランダムに選ばれた複数日分を、長期間にわたって提出する仕組みです。
そのため、特定の日の食事ではなく、ふだんの食習慣を平均的に捉えられる設計になっています。
● 食品の分類:NOVA分類とは?
記録された食品は、
食品を「栄養素」ではなく加工の程度で分類する
NOVA分類という方法を用いて整理されました。
NOVA分類では、食品を次の4つに分けます。
- 未加工・最小加工食品
(野菜、果物、肉、魚、卵、牛乳など) - 加工用料理素材
(油、砂糖、塩など、調理に使う素材) - 加工食品
(チーズ、缶詰、パンなど、比較的シンプルな加工食品) - 超加工食品(UPF)
(菓子パン、スナック菓子、清涼飲料水、レトルト食品など)
本研究では、特にこの超加工食品の摂取量に注目しています。
● 摂取量は「割合」で評価された
超加工食品の摂取量は、
「どれくらい食べているか」を割合(%)で評価しました。
具体的には、
- 1日の総エネルギー摂取量に占める割合(%kcal/日)
- 1日の総摂取重量に占める割合(%g/日)
の2つの指標が使われています。
特に主要な解析では、
「重量比(%g/日)」が重視されました。
これは、エネルギーをほとんど含まない超加工食品
(例:人工甘味料入り飲料など)も、
加工度という観点から正しく評価するためです。
● この研究で何を見ようとしたのか
このようにして算出された
超加工食品が食事全体に占める割合と、
その後の長期追跡で確認された死亡リスクとの関連を分析することで、
「超加工食品を多く食べる人ほど、
将来的な健康リスクは高くなるのか?」
という問いに、
実際の生活データをもとに答えようとした研究です。
主な結果|超加工食品の摂取量と死亡リスクの関係
● 死亡リスクは「ハザード比(HR)」で評価された



この研究では、“死亡リスク”ってどうやって比べているんですか?



いい質問だね。
この研究では、ハザード比(Hazard Ratio:HR)という指標が使われているよ。
ハザード比(HR)とは、
ある要因(ここでは超加工食品の摂取量)を多く持つ人と、少ない人とで、
将来その出来事(死亡)が起こる確率を比べた指標です。
この研究では、
Cox比例ハザード回帰モデルという統計手法を用いて、
超加工食品(UPF)の摂取割合と全死亡リスクとの関連が分析されました。
● 結果:摂取割合が10%増えるごとに、死亡リスクは14%上昇
研究の主な結果は、次の通りです。
- 超加工食品の摂取割合が10%増えるごとに
👉 全死亡リスクは14%高くなるという関連が確認されました
(HR 1.14、95%信頼区間 1.04–1.27)



“10%前後”じゃなくて、
14%ってはっきり出ているんですね。



そう。
だから正確には“約14%上昇”と表現するのが大事なんだ。
この結果は、
超加工食品を「たくさん食べているか・いないか」という二択ではなく、
摂取割合が増えるほど、段階的にリスクが高まる
という関係を示しています。
● 多くの要因を調整したあとでも、関連は残った
この関連が注目される理由は、
さまざまな生活習慣や背景要因を統計的に調整したあとでも、なお残っていた点にあります。
調整された主な要因には、以下が含まれます。
- 年齢
- 性別
- 喫煙習慣
- 身体活動量(運動量)
- BMI(体格指数)
- 総エネルギー摂取量(カロリー)
- アルコール摂取量
- 所得・教育レベル・婚姻状況などの社会経済的要因
- 家族歴(がん・心血管疾患)
- 食事全体の栄養バランス(塩分、糖分、食物繊維など)



つまりね、
“たくさん食べる人だから”とか
“運動しない人だから”だけでは説明できない関連が見られた、
ということなんだ。



生活習慣をできるだけそろえても、
それでも差が残ったんですね。
● ここで誤解しやすいポイント(とても重要)



ただし、ここは必ず押さえておきたいポイントがあるよ。
- この研究は 観察研究 である
- そのため、「超加工食品を食べたから死亡した」
という因果関係を証明したわけではない - あくまで“摂取割合が高い人ほど、将来的な死亡リスクが高い傾向があった”
という関連を示したもの



じゃあ、“食べたら寿命が縮む”って決めつけるのは違うんだ。



その通り。
でも同時に、
長期的な健康を考えるうえで無視できないシグナル
でもある、という位置づけなんだ。
● この結果が意味すること
この研究結果は、
超加工食品が、
食生活の中で占める割合が高くなるほど、
長期的な死亡リスクと関連していた
という事実を示しています。
これまでの記事で見てきた、
- 食べすぎやすさ
- 噛まずに食べられる設計
- やめにくさ(依存性)
といった特徴が積み重なった結果として、
長期アウトカム(死亡リスク)につながっている可能性が示唆されます。
この研究から言えること/言えないこと
● まず大前提:この研究は「観察研究」



ここまで読むと、
“超加工食品=寿命に悪い”って思っちゃいそうになります…。



そこで一度、立ち止まろう。
この研究は 観察研究(コホート研究) なんだ。
観察研究とは、
人々の生活習慣を長期間“観察”し、
その後に起こった出来事との関連を調べる研究です。
この研究でも、
- 参加者の食事内容を記録
- 超加工食品の摂取割合を算出
- 数年間追跡して死亡との関連を分析
という手順が取られています。
● この研究から「言えること」
まず、この研究から 科学的に言えること を整理します。
✔ 言えること①
超加工食品の摂取割合が高い人ほど、
将来的な死亡リスクが高い傾向が見られた
- 摂取割合が10%増えるごとに
👉 全死亡リスクが 14%上昇 するという関連 - 多くの生活習慣・社会経済要因を調整したあとでも残った
これは、
単なる偶然や生活習慣の違いだけでは説明しきれない関連
であることを意味します。
✔ 言えること②
リスクは「段階的」に増えていた
- 食べる・食べないの二択ではない
- 摂取割合が増えるほど、少しずつリスクが高まる



“たまに食べると危険”という話ではなく、
“日常的に占める割合”が問題なんだ。
● 一方で「言えないこと」
ここがとても重要です。
✖ 言えないこと①
因果関係は証明できない
この研究だけでは、
- 「超加工食品を食べたから死亡した」
- 「超加工食品を減らせば必ず寿命が延びる」
とは 言えません。
観察研究では、
- 食事
- 健康意識
- 医療アクセス
- ストレス
- 文化的背景
など、すべてを完全にコントロールすることは不可能だからです。
✖ 言えないこと②
特定の食品が“犯人”とは言えない



じゃあ、
“この食品がダメ!”って決めつけるのも違うんですね。



その通り。
この研究は “食品単体”ではなく、
“食生活全体の構造” を見ているんだ。
超加工食品の摂取割合が高い食生活では、
- 食物繊維が少ない
- 咀嚼が少ない
- 食べるスピードが速い
- 満腹調整が働きにくい
といった要素が まとめて存在している可能性があります。
● それでも、この研究が重要な理由



“因果が証明できない”=“意味がない”ではないよ。
この研究の価値は、
- 4万人超を長期追跡した大規模データ
- JAMA Internal Medicine 掲載という高い信頼性
- これまでの
- 食べすぎ
- 噛まない食行動
- 依存性
という研究結果と 一貫した方向性
にあります。



短期・中期の“行動の問題”が、
長期的な健康リスクとつながっている可能性が見えてきた、
ってことですね。
● まとめ:正しい受け止め方
この研究の正しい読み方は、
「超加工食品を食べたら寿命が縮む」ではなく、
「超加工食品が食生活の中で大きな割合を占める状態が、
長期的な健康リスクと関連している」
というものです。
だからこそ次に大切なのは、
👉 じゃあ、日常生活ではどう考えればいいのか?
👉 完全に避けるべきなのか?それとも付き合い方の問題なのか?
次のセクションで、
恐怖ではなく“現実的な行動指針”として整理していきます。
日常生活でどう考えればいい?



研究の話は分かったけど…
正直、全部避けるなんて無理ですよね?



うん。“ゼロにする”発想は現実的じゃない。
大事なのは“どう付き合うか”だよ。
ここでは、
これまで紹介してきた研究を踏まえて、日常生活で無理なく活かせる考え方を整理します。
● 結論から:ポイントは「割合」と「構造」
この研究が教えてくれる最大のポイントは、
超加工食品を食べるかどうかではなく、
“食生活の中でどれくらい占めているか”です。
- たまに食べる → 問題になりにくい
- 日常の中心になる → リスクが積み重なる可能性



“イベント食”と“日常食”を分けて考えるのがコツだね。
● 実践①:まずは「主食・主菜」を最小加工に寄せる
完璧を目指す必要はありません。
軸になる部分だけ整えるのが現実的です。
例:
- 主食:
- × 菓子パン・甘いシリアル
- ○ ごはん、オートミール、全粒パン
- 主菜:
- × 加工肉・冷凍揚げ物中心
- ○ 肉・魚・卵・豆をシンプル調理



おやつや間食まで全部気にしなくていいんですね。



うん。“毎食のベース”が一番効く。
● 実践②:「噛む回数」が減りそうな食事に気づく
これまでの研究で一貫していたのは、
超加工食品 → 噛まない → 食べるのが速い → 食べすぎやすい
という流れでした。
そこで意識したいのが、
- やわらかくて
- 飲み込むまでが早くて
- あまり噛まずに食べ終わる
こうした食事が 連続していないか をチェックすること。



“今日は噛んだかな?”って考えるだけでも違うよ。
● 実践③:「忙しい日の選択肢」をあらかじめ用意する
超加工食品が増えやすいのは、
- 忙しい日
- 疲れている日
- 判断力が落ちているとき
です。
だからこそ重要なのは、
疲れているときの“代替案”を決めておくこと。
例:
- コンビニなら
→ サラダ+ゆで卵+おにぎり - 冷凍食品なら
→ 単品ではなく、野菜や主食を足す



その場で考えなくていいのが助かります…!
● 実践④:「やめられない=意志が弱い」ではない
Gearhardtの研究でも示されていたように、
超加工食品は“やめにくい設計”になっています。



だから、
“自分がだめ”って責める必要はないよ。
- 食品の性質
- 脳の報酬系
- 食べやすさの設計
これらが重なっているだけ。
必要なのは自己否定ではなく、環境調整です。
● まとめ:目指すのは「現実的に続く食生活」



完璧じゃなくてもいい、って分かって安心しました。



そう。
この研究が教えてくれるのは、
“怖がる”より“整える”が大事ってこと。
- 超加工食品は「たまに」
- 日常のベースは最小加工食品
- 噛む・食べる速さを意識
- 忙しい日の選択肢を決めておく
この積み重ねが、
長期的な健康リスクを下げる方向に働く可能性があります。
👉 まとめ



“寿命に影響する?”って聞くと、最初はちょっと怖かったけど…
読み終わると、ちゃんと整理できました。



うん。この研究は不安をあおるためのものじゃない。
“どう考えればいいか”を教えてくれる研究なんだ。
● この記事の要点を整理すると
今回紹介した JAMA Internal Medicine の大規模研究から分かることは、次の3点です。
1️⃣ 超加工食品の摂取割合が高い人ほど、死亡リスクが高いという「関連」が見られた
- 超加工食品の割合が10%増えるごとに
👉 全死亡リスクが約14%高くなるという関連 - 年齢・喫煙・運動・BMI・カロリーなどを調整後も残った
2️⃣ ただし、これは因果関係を証明した研究ではない
- 観察研究であり
- 「超加工食品を食べると必ず寿命が縮む」とは言えない
- あくまで長期的なリスクの“傾向”を示したもの
3️⃣ それでも、これまでの研究とつなげると一貫した流れが見える
- 食べすぎやすい(Hall)
- 噛まなくなる(Hamano)
- やめにくい設計(Gearhardt)
- その積み重ねが、長期的な健康リスクと関連する可能性



短期の話じゃなくて、
“長年の食習慣の積み重ね”ってことなんですね。
● この研究が示す「本当のメッセージ」
この研究が伝えているのは、
“恐れなさい”ではなく、
“食生活のバランスを意識しよう”というメッセージです。
- 超加工食品を完全に排除する必要はない
- でも、日常の中心になり続けると、リスクが積み重なる可能性がある
- だからこそ「割合」と「習慣」が大切
あわせて読みたい(超加工食品シリーズ)










● 未来の食生活をどう描くか



じゃあ、目指すのはどんな食生活なんでしょう?



こんなイメージかな。
- 普段の食事は
→ 最小加工食品をベースに - 忙しい日は
→ 現実的な“次善の選択”を用意 - 超加工食品は
→ たまに楽しむ“選択肢の一つ”
こうしたスタイルなら、
無理なく・長く続けられる。
● シリーズ全体を通して伝えたいこと
このシリーズでは、
- なぜ食べすぎるのか
- なぜやめにくいのか
- その積み重ねが何につながるのか
を、感情ではなく科学で見てきました。



怖がるより、知る方が前向きですね。



そう。
知ることは、選べるようになること。
この記事が、
あなた自身の食生活を見直す
小さなきっかけになれば嬉しいです。
参考文献
Schnabel L, Kesse-Guyot E, Allès B, et al.
Association Between Ultraprocessed Food Consumption and Risk of Mortality Among Middle-aged Adults in France.
JAMA Intern Med. 2019;179(4):490–498.
doi:10.1001/jamainternmed.2018.7289









