「超加工食品って、どうしてつい食べすぎちゃうんでしょう?」
スナック菓子や菓子パン、加工肉や冷凍食品など、
身近で便利な超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)。
カロリーや栄養成分を気にして選んでいるのに、
「気づいたら食べすぎていた…」という経験、ありませんか?
すずちゃん意志が弱いだけなのかなって、ちょっと落ち込んじゃいます…



実はね、それ“意志”だけの問題じゃない可能性が高いんだよ。
近年の研究では、
超加工食品は私たちの“食べ方そのもの”を変えてしまうことが分かってきました。
特に注目されているのが、咀嚼回数(噛む回数)と食べるスピードです。
今回紹介するのは、
日本人を対象に行われたランダム化クロスオーバー試験(RCT)。
同じ参加者が「超加工食品中心の食事」と「非超加工食品中心の食事」をそれぞれ経験し、
咀嚼回数・食事スピード・エネルギー摂取量・体重変化まで詳しく調べた研究です。
この記事では、
「なぜ超加工食品だと食べすぎやすくなるのか?」を
“噛む回数”という視点から、科学的にひも解いていきます。
この記事で分かること
- なぜ超加工食品は、自然と食べるスピードが速くなりやすいのか
- 咀嚼回数(噛む回数)が減ると、何が体の中で起こるのか
- 日本人RCTで確認された「食行動の違い」とその結果
- 「カロリー」や「栄養成分」だけでは説明できない理由
- 超加工食品を完全に避けなくてもできる、現実的な対策の考え方



“何を食べるか”だけじゃなくて、“どう食べるか”が大事なんだ。
超加工食品を怖がりすぎず、でも無防備に食べすぎないために。
まずは、この研究結果から一緒に見ていきましょう。
これまでの研究で分かっていたこと|超加工食品は「意志」と関係なく食べすぎやすい
超加工食品(UPF)の話題になると、
「カロリーが高いから太る」「つい食べすぎるのは意志が弱いから」
と思われがちです。
でも近年は、“意志だけでは説明できない”ことを示す研究が増えています。



えっ…意志の問題じゃないこともあるんですか?



うん。ポイントは“人の性格”じゃなくて、食品の性質が食行動を変えうるってことだよ。
① 入院管理下RCTで分かった「食べすぎやすさ」
まず代表的なのが、入院管理下で行われたランダム化比較試験です。
この研究では、超加工食品中心の食事期間に自分では気づきにくい形で摂取量が増えやすいことが示されました。
詳しくはこちらで解説しています👇


この1本はシリーズの“土台”なので、今回の記事(咀嚼)を読む前提としても、読んだ後の補足としても役立ちます。
② 「栄養を整えても」加工度の影響が残る可能性
次に重要なのが、健康ガイドラインを満たすように栄養を整えた食事でも、
超加工食品中心と最小加工食品中心で、体重変化などに差が出うることを検証した研究です。
つまり、ここで見えてくるのは、
- 「栄養バランスを良くする」ことは大事
- でもそれだけで、加工度の影響がゼロになるとは限らないかもしれない
という、かなり現実的な視点です。
詳しくはこちらで解説しています👇


③ 「高タンパク」でも過食を完全に止められない可能性
さらに最近は、
「じゃあ高タンパクなら満腹になって食べすぎないのでは?」という疑問に対して、
高タンパク・低炭水化物の超加工食品でも、エネルギー過剰が起こりうることを検討した研究も出てきました。
ここまでの流れをまとめると、シリーズ全体としてはこうです。
- 超加工食品は食べすぎが起きやすい(入院RCT)
- 栄養を整えても差が出る可能性(ガイドライン準拠RCT)
- 高タンパクでも完全には止まらない可能性(高タンパクUPF試験)
そして、ここで次に知りたくなるのが——
「なぜ、そんなことが起きるの?」



そこで出てくる“超重要なカギ”が、咀嚼(噛む回数)と食べるスピードなんだ。



なるほど…“何を食べるか”だけじゃなく、“どう食べるか”も関係してくるんですね!
結果|超加工食品で咀嚼回数と食べる速さはどう変わった?(日本人RCT)
この研究では、日本人の健康な成人を対象に、
超加工食品中心の食事と非超加工食品中心の食事を
同じ参加者がそれぞれ経験するクロスオーバー試験が行われました。
注目されたのは、
「何をどれだけ食べたか」だけでなく、どのように食べたか(咀嚼・スピード)です。
① 咀嚼回数は有意に少なかった
研究の結果、超加工食品を中心とした食事期間では、
- 1キロカロリーあたりの咀嚼回数が有意に少ない
- 同じエネルギー量を摂るのに、噛む回数が明らかに減っていた
ことが示されました。



同じカロリーでも、噛む回数が違うんですね…



そう。“どれくらい噛むか”は食品の性質にかなり左右されるんだ。
超加工食品は、
柔らかい・均一・口どけが良いといった特徴を持つことが多く、
自然と噛む必要が少なくなる構造になっています。
この研究でも、
咀嚼の負担が軽い食事ほど、無意識のうちに噛む回数が減る傾向が確認されました。
② 食べるスピードは明らかに速くなった
さらに重要なのが、食べる速さ(摂食速度)です。
超加工食品の期間では、
- 1分あたりに摂取するエネルギー量(kcal/分)が増加
- 1分あたりの摂取重量(g/分)も増加
しており、
全体として「食べるスピードが速くなる」ことが示されました。
これは、
- 噛む回数が少ない
- 飲み込みやすい
- 食事が均質でリズムよく食べ進められる
といった、超加工食品の物理的な性質による影響と考えられます。
③ 咀嚼とスピードの変化は、摂取量・体重変化と結びついていた
この研究では、
咀嚼回数の減少や食べるスピードの上昇とともに、
- エネルギー摂取量の増加
- 短期間での体重増加
も観察されました。
つまり、
超加工食品 → 噛む回数が減る → 食べるスピードが上がる → 気づかないうちに摂取量が増える
という一連の流れが、
日本人データでも裏づけられた形になります。



これは“意志が弱いから”じゃなくて、
食べ物の構造そのものが行動を変えているって考えた方が自然だね。
なぜ「噛まない」と食べすぎにつながるのか?(生理学的メカニズム)
超加工食品では
噛む回数が減り、食べるスピードが速くなることが示されました。
ではなぜ、
「噛まない」「早く食べる」ことが、
結果として食べすぎにつながりやすくなるのでしょうか。
この点について、研究や既存の生理学的知見から、
いくつかのメカニズムが考えられています。
① 満腹シグナルが脳に届く前に食べ終えてしまう
私たちが「お腹いっぱい」と感じるまでには、
ある程度の時間差があります。
- 食べ物が口に入る
- 噛む・飲み込む
- 胃や腸が刺激される
- 消化管からの信号が脳に伝わる
この一連の流れには、10〜20分程度かかるとされています。
超加工食品のように、
- 噛む回数が少ない
- 飲み込みやすい
- 食べるスピードが速い
食事では、
満腹シグナルが立ち上がる前に、食事が進みすぎてしまう可能性があります。



お腹いっぱいって、あとから気づく感じなんですね…



そう。早く食べるほど、そのズレが大きくなりやすいんだ。
② 咀嚼そのものが「食欲のブレーキ」として働く
噛むという行為は、
単に食べ物を細かくするためだけの動作ではありません。
これまでの研究では、
- 咀嚼刺激が脳の満腹中枢を活性化する
- よく噛むことで食欲抑制系の神経活動が高まる
といったことが報告されています。
つまり、
噛むこと自体が「食べる量を調整するブレーキ」として働いている可能性があります。
超加工食品ではこの咀嚼刺激が弱くなり、
結果として自然なブレーキがかかりにくくなると考えられます。
③ 消化管ホルモンの反応が弱くなる可能性
十分な咀嚼と、ゆっくりした摂食は、
- 食欲を抑えるホルモン(例:GLP-1、PYYなど)
- 満腹感の持続
に関与するとされています。
一方で、
- 噛む回数が少ない
- 摂食時間が短い
食事では、
こうしたホルモン反応が十分に引き出されない可能性があります。
この研究(Hamano 2024)では、
ホルモン測定そのものが主目的ではありませんが、
咀嚼と摂食行動の変化が、摂取量や体重変化と並行して起きていた点は重要です。
④ 「意志」ではなく「体の仕組み」の問題として考える
ここまでのポイントをまとめると、
- 噛まない
- 早く食べる
- 満腹シグナルが遅れる
- ブレーキが弱くなる
という流れは、
本人の意志とは関係なく起こりうる反応です。



だからこれは、“我慢できない人が悪い”って話じゃないんだ。



食べ物の形や食べ方が、体の反応を変えてるんですね…
超加工食品は、
栄養成分だけを見ると問題がなく見える場合でも、
“どう食べさせるか”という点で、人の生理に影響を与える可能性がある。
この視点が、今回の研究から見えてきます。
この研究から言えること/言えないこと(解釈の注意点)
Hamano 2024 の研究は、
超加工食品と食行動(咀嚼・摂食速度)との関係を示した、
非常に示唆に富む研究です。
一方で、
研究結果を正しく活かすためには、
「言えること」と「言いすぎてはいけないこと」を分けて考える必要があります。
ここでは、そのポイントを整理します。
この研究から「言えること」
① 超加工食品は、意志とは関係なく食行動を変えうる
この研究では、
- 超加工食品の摂取期間に
- 咀嚼回数が減り
- 食べるスピードが速くなり
- エネルギー摂取量と体重変化がそれに伴って起きていた
ことが示されました。
重要なのは、
「頑張って食べすぎた」わけではなく、自然な食行動の変化として起きていた
という点です。
つまり、
超加工食品は、
人の意思決定よりも手前の“身体反応”に働きかける可能性がある
と考えられます。
② 「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」が重要
これまでの研究では、
- カロリー
- 栄養バランス
- タンパク質量
といった要素が注目されがちでした。
しかしこの研究は、
食品の加工度が「噛み方」「食べる速さ」を通じて摂取量に影響する
という行動レベルの視点を補強しています。



栄養の中身だけ見ても、全部は説明できないんだよ。
③ 日本人を対象としたデータである
本研究は、
日本人を対象に行われた入院管理下の試験です。
そのため、
- 食文化
- 咀嚼習慣
- 食事のテンポ
といった点で、
日本の生活に比較的近い条件で得られた結果と言えます。
これは、海外研究が中心だった
超加工食品研究の中で、重要な補完材料になります。
一方で、この研究から「言えないこと」
① 超加工食品を食べたら必ず太る、とは言えない
この研究は、
- 短期間
- 少人数
- 特定の条件下
で行われた試験です。
そのため、
- 超加工食品を食べた人は必ず太る
- 一度食べたら体重が増える
といった断定的な結論は導けません。
あくまで、
「超加工食品は、食べすぎにつながりやすい条件を作りやすい」
というレベルの示唆にとどめる必要があります。
② すべての超加工食品が同じ影響を持つわけではない
「超加工食品」という分類には、
- 菓子・スナック
- 加工肉
- 調理済み食品
- 栄養調整食品
など、非常に幅広い食品が含まれます。
この研究結果をもって、
- すべての超加工食品が危険
- 完全に避けるべき
と結論づけることはできません。
③ 咀嚼だけが原因とは限らない
本研究では、
- 咀嚼回数
- 摂食速度
が重要な要因として示されましたが、
それだけで全てが説明できるわけではありません。
- エネルギー密度
- 食物繊維量
- 食感・嗜好性
など、
複数の要素が組み合わさって影響している可能性があります。
解釈のポイントまとめ
この研究は、
- 超加工食品=悪
- 咀嚼が少ない=必ず太る
と単純化するためのものではありません。
むしろ、
食品の加工度が、無意識の食行動にどう影響するかを理解するための研究
と捉えるのが適切です。



食べ方まで含めて、食事なんですね…



そう。“選び方”と“食べ方”の両方を見ることが大切なんだ。
日常生活でどう活かす?超加工食品との付き合い方
ここまでの研究を読むと、
「じゃあ、超加工食品は一切食べない方がいいの?」
と感じるかもしれません。
でも、現実の生活では
完全に避けるのは難しい場面も多いですよね。
この研究から学べるのは、
“ゼロか100か”ではなく、付き合い方を工夫する視点です。
① 「噛みにくい食品」が続くときは、食べ方を意識する
超加工食品は、
- 柔らかい
- 飲み込みやすい
- 早く食べ終わりやすい
という特徴を持つものが多くあります。
こうした食品を食べるときは、
- 一口ごとに箸を置く
- よく噛むことを意識する
- 食事時間を短く終わらせない
といった食べ方の工夫が、
自然なブレーキとして役立つ可能性があります。



“何を食べるか”だけじゃなく、“どう食べるか”も大事だね。
② 超加工食品だけで食事を完結させない
研究では、
咀嚼回数や食感の違いが重要な要素でした。
そのため、
- サラダ
- 具だくさんの汁物
- 硬さのある食材(野菜、きのこ、豆類など)
を一緒に組み合わせることで、
食事全体の噛む量や食べるテンポを調整しやすくなります。
「一品プラスする」だけでも、
体の反応は変わるかもしれません。
③ 忙しい日ほど「意志」より「環境」を整える
食べすぎは、
「我慢できなかった」から起きるとは限りません。
- 時間がない
- 疲れている
- 空腹が強い
そんなときほど、
噛まずに食べられる食品に手が伸びやすいのは自然な反応です。
だからこそ、
- 空腹のまま食事を始めない
- 早食いになりにくい環境をつくる
- まとめ食いを避ける
といった環境側の工夫が、意志よりも効果的な場合があります。
④ 「超加工=悪」ではなく、使いどころを考える
この研究は、
超加工食品を否定するためのものではありません。
- 非常時
- 外出先
- 時間がどうしても取れない日
など、
役立つ場面も確かにあります。
大切なのは、
毎日の“ベース”を何で作るか
という視点です。
ベースが最小加工食品中心であれば、
超加工食品は「補助的な存在」として
無理なく付き合いやすくなります。



全部やめるんじゃなくて、使い分けなんですね。
日常への落とし込み(まとめ)
この研究が教えてくれるのは、
- 食べすぎは意志の弱さだけではない
- 食品の形や食感が、無意識の行動を変える
- 食べ方や組み合わせで、影響を和らげる余地がある
ということです。
超加工食品を
怖がりすぎず、でも無防備にもならない。
そんな距離感が、
長く続けやすい食生活につながります。
まとめ:超加工食品を「噛む視点」で見直すと、食べ方が変わる
この記事では、
日本人を対象に行われた入院管理下RCT(Hamano 2024)をもとに、
なぜ超加工食品では食べすぎが起こりやすいのか
を「咀嚼」という視点から見てきました。
この記事の要点
- 超加工食品を食べている期間は、
咀嚼回数が減り、食べるスピードが速くなっていた - その結果、
エネルギー摂取量が増え、体重変化が起きていた - これは意志の弱さではなく、
食品の物理的な性質(柔らかさ・飲み込みやすさ)が
無意識の食行動に影響した可能性を示している - 研究は短期間・限定条件の結果であり、
超加工食品=必ず太る、という断定はできない - しかし、
「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」を考える重要性が
はっきり見えてきた
未来へのヒント:選び方+食べ方で、付き合い方は変えられる
この研究が教えてくれるのは、
極端な制限ではなく、視点の切り替えです。
- 噛みにくい食品が続く日は、食べ方をゆっくり意識する
- 超加工食品だけで食事を完結させず、噛む食材を組み合わせる
- 忙しい日ほど「我慢」より「環境」を整える
こうした小さな工夫でも、
体の反応は変わる可能性があります。



食事は、栄養だけじゃなく“体との対話”なんだ。



噛むって、思ってたより大事なんですね。
超加工食品を「敵」にしないために
超加工食品は、
現代の生活に欠かせない側面も持っています。
だからこそ大切なのは、
避けるかどうかではなく、どう付き合う
加工度・栄養・食べ方。
この3つを少し意識するだけで、
食事はもっと自分の味方になります。
今日の一食から、
「噛む」という視点を、そっと足してみてください。
📝 参考文献
- Hamano S, Sawada M, Aihara M, et al. Ultra-processed foods cause weight gain
and increased energy intake associated with reduced chewing frequency:
A randomized, open-label, crossover study.
Diabetes, Obesity and Metabolism. 2024 Nov;26(11):5431-5443.
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39267249/ - Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. Ultra-Processed Diets Cause
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Nature Metabolism. 2025.
DOI: 10.1038/s42255-025-01247-4
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