みどりんねえすずちゃん、地中海食って心臓に良いって聞くけど、なんで効くのか正直よくわからなくない?



わかる!オリーブオイルとか魚が体に良いのはなんとなく知ってるけど、その理由って曖昧だよね。
実は最近の研究で、地中海食が心臓を守る分子レベルのメカニズムが少しずつ解明されてきました。
そのカギを握るのが、ミトコンドリア由来のマイクロプロテイン「ヒューマニン」と「SHMOOSE」です。
2025年にFrontiers in Nutritionに掲載された研究では、地中海食をしっかり実践している人ほど、これらのタンパク質の血中濃度が高く、心血管リスクと関連する酸化ストレスが低いことが示されました。
「ミトコンドリア」「マイクロプロテイン」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、この記事では薬剤師の視点からわかりやすく解説していきます。


ミトコンドリア・マイクロプロテインとは?「ヒューマニン」と「SHMOOSE」の基礎知識
「ミトコンドリア」といえば、学校の授業で「細胞のエネルギー工場」として習った記憶がある方も多いでしょう。しかしミトコンドリアの役割は、ATPを作るだけにとどまりません。
実は近年、ミトコンドリアのDNA(mtDNA)から「マイクロプロテイン(ミトコンドリア由来ペプチド:MDPs)」と呼ばれる小さなタンパク質が産生されることがわかってきました。
これらは100アミノ酸未満という非常に小さなサイズながら、体のさまざまな機能調節に関わっていることが明らかになっています。
ヒューマニン(Humanin)とは
ヒューマニンは、mtDNAの16S rRNA領域にコードされるマイクロプロテインです。
主な働きとして、以下のことが報告されています。
- 神経細胞の保護:アポトーシス(細胞死)を抑制する
- インスリン感受性の向上:血糖コントロールのサポート
- 血管内皮機能の保護:動脈硬化の予防に関与
- 酸化ストレスへの抵抗:細胞をダメージから守る



なんか、ヒューマニンって名前からして体を守ってくれそう!
その名の通り、ヒューマニンは加齢とともに体内での産生量が低下することが知られており、心血管疾患や認知症リスクとの関連が注目されているペプチドです。
SHMOOSE(シュムース)とは
SHMOOSEは、比較的最近発見されたマイクロプロテインで、mtDNAのセリンtRNA領域に重なる小さなオープンリーディングフレーム(smORF)からコードされます。
- 神経保護効果:アルツハイマー病のリスクとの関連が報告されている
- ミトコンドリア機能の維持に関与する可能性が示唆されている
ヒューマニンと比較するとまだ研究の歴史は浅いですが、脳と心臓の両方を守る可能性を秘めた注目ペプチドです。
💡 薬剤師メモ
これらのマイクロプロテインは、まだ研究段階のものも多く、サプリメントとして市販されているわけではありません。あくまで「食事や生活習慣が体内での産生量に影響する」という視点で理解しておくことが重要です。
地中海食とミトコンドリア機能の関係|2025年最新研究が明らかにしたこと
地中海食が心臓に良いことは以前から知られていましたが、「なぜ良いのか」という分子レベルのメカニズムは長い間不明なままでした。
2025年、イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学などの研究チームがFrontiers in Nutritionに発表した研究が、そのナゾに迫る重要な手がかりを提供しています。
研究の概要
この研究は、非弁膜症性心房細動の患者49名(平均年齢78.4歳)を対象とした横断的観察研究です。
参加者を地中海食への遵守度によって2グループに分類しました。
| グループ | スコア |
|---|---|
| 低・中遵守群 | 0〜6点 |
| 高遵守群 | 7〜9点(9点満点) |
そして、血液中のヒューマニン・SHMOOSE濃度と、酸化ストレスマーカー(sNox2-dp・8-iso-PGF2α)を測定・比較しました。
研究結果|地中海食を守るほどマイクロプロテインが増える
結果は非常に明確でした。
- SHMOOSE:高遵守群で有意に高値(p = 0.046)
- ヒューマニン:高遵守群で有意に高値(p = 0.045)
さらに、地中海食への遵守度が高いグループでは、酸化ストレスマーカーも有意に低下していました。
- sNox2-dp(Nox2活性の指標):p = 0.018
- 8-iso-PGF2α(脂質過酸化の指標):p < 0.001



地中海食を続けると、体の中で守ってくれるタンパク質が増えるってことなんだね!
その通りです。この研究は、食事パターンがミトコンドリアの遺伝子発現に直接影響を与える可能性を示した点で、栄養科学における重要な一歩といえます。
研究の限界について
サンプルサイズが49名と少なく、横断研究のため因果関係の証明はできていません。今後より大規模な介入研究での検証が必要です。「地中海食=確実にヒューマニンが増える」と断言はできませんが、関連性を示す有望なエビデンスとして位置づけられます。
オリーブオイル・魚・豆類がヒューマニンを増やす|食品別エビデンス
今回の研究で特に注目すべきは、「地中海食全体」としての効果だけでなく、特定の食品とマイクロプロテインの関連が個別に検証されている点です。
SHMOOSE濃度を上げる食品
SHMOOSEの血中濃度上昇と関連していたのは、以下の2つの食習慣でした。
| 食習慣 | 詳細 | p値 |
|---|---|---|
| オリーブオイルの摂取 | 1日1大さじ(約15ml)以上 | p = 0.020 |
| 精製パンの制限 | 1日1回未満 | p = 0.029 |
精製パン(白パンなど)の摂取を減らすことがSHMOOSEの上昇と関連している点は、単に「何を食べるか」だけでなく「何を控えるか」も重要であることを示唆しています。
ヒューマニン濃度を上げる食品
ヒューマニンの上昇には、より多くの食品が関与していることが示されました。
| 食習慣 | 詳細 | p値 |
|---|---|---|
| オリーブオイルの摂取 | 1日1大さじ以上 | p = 0.006 |
| 魚の摂取 | 週3回以上 | p = 0.038 |
| 豆類の摂取 | 週2回以上 | p = 0.028 |
オリーブオイルはSHMOOSE・ヒューマニンの両方に関連しており、地中海食の中心的な食材としての重要性があらためて確認された形です。



サバやイワシを週3回、豆料理を週2回か。和食中心の日本人でも意外とできそう!
その通りで、実は和食は地中海食と共通点が多い食事パターンです。魚・豆類・植物油を積極的に取り入れる和食の習慣は、ミトコンドリア機能の維持にも理にかなっているといえるでしょう。
ヒューマニンが心臓を守るメカニズム|Nox2酸化ストレスとの深い関係
この研究の中でも特に重要な発見が、ヒューマニンとNox2の逆相関関係です。
Nox2(NADPH酸化酵素2)とは何か
Nox2は、体内で活性酸素種(ROS)を産生する酵素です。心房細動などの心血管疾患では、このNox2が過剰に活性化し、血管や心筋にダメージを与える酸化ストレスが引き起こされることが知られています。
💊 薬剤師メモ
Nox2は心不全・動脈硬化・心房細動などの病態形成に関わる重要な酵素です。抗酸化療法の標的としても注目されており、その活性を抑えることが心血管保護につながると考えられています。
ヒューマニンがNox2を抑制する「二重保護メカニズム」
今回の研究では、以下の相関が確認されました。
- ヒューマニン濃度 ↑ ⟺ sNox2-dp(Nox2活性の指標) ↓
(ρ = −0.335、p = 0.019、性別・BMI調整後も有意:p = 0.040) - ヒューマニン濃度 ↑ ⟺ 8-iso-PGF2α(脂質過酸化の指標) ↓
(ρ = −0.283、p = 0.049)
これは偶然の一致ではなく、ヒューマニンがNox2の活性を内因的に抑制するエフェクターとして機能している可能性を示しています。
つまり、地中海食による心血管保護は次のような二重構造で機能していると考えられます。
地中海食の実践
↓
① 食事自体の抗酸化作用(ポリフェノール・オメガ3など)
+
② ヒューマニン産生促進 → Nox2活性の抑制 → 酸化ストレス低下
↓
心血管保護効果
地中海食が「なんとなく体に良い」ではなく、ミトコンドリアを経由した精密な生物学的メカニズムで心臓を守っている可能性が、この研究によって示されたわけです。
地中海食を日本の食卓で実践する方法|今日からできる3つのポイント
研究結果を踏まえ、日常生活で実践できる具体的なポイントをまとめます。
① オリーブオイルを「毎日の習慣」にする
今回の研究で最も強く関連が認められたのがオリーブオイルの摂取です。目安は1日大さじ1杯(約15ml)以上。
- サラダのドレッシングをオリーブオイル+レモンに変える
- 炒め物の油をオリーブオイルに切り替える
- パンに塗るバターの代わりにオリーブオイルをつける
エキストラバージンオリーブオイルにはオレオカンタールなどのポリフェノールが豊富で、抗炎症・抗酸化効果も期待できます。
② 魚と豆類を週の食事に組み込む
- 魚:週3回以上を目標に。サバ・イワシ・サーモンなどの青魚はオメガ3脂肪酸も豊富でおすすめ
- 豆類:週2回以上。納豆・豆腐・ひよこ豆・レンズ豆などを活用する
納豆や豆腐は日本の伝統食であり、地中海食の豆類摂取の目標を達成しやすい環境にあります。
③ 精製された白パン・白米の過剰摂取を見直す
SHMOOSEの上昇と関連していた「精製パンの制限」は、血糖スパイクの抑制と細胞内の酸化ストレス軽減という観点からも理にかなっています。
- 白米を玄米や麦飯に切り替える
- パンを食べるなら全粒粉パンを選ぶ
- 糖質の過剰摂取を控え、食物繊維を意識的に摂る



要は昔ながらの和食+オリーブオイルが最強ってこと?
シンプルに言えばそうかもしれません。和食の魚・大豆文化に、地中海食のオリーブオイルと野菜・豆類の考え方を組み合わせることが、ミトコンドリアを守る食事パターンへの近道といえそうです。
まとめ|地中海食とミトコンドリア・マイクロプロテインが示す「心臓を守る食べ方」
今回ご紹介した研究は、以下の重要なポイントを私たちに教えてくれています。
- 地中海食の高い遵守は、ヒューマニン・SHMOOSEの血中濃度上昇と有意に関連している
- オリーブオイル・魚・豆類の積極的摂取と、精製パンの制限が特に重要
- ヒューマニンはNox2を介した酸化ストレスの抑制に関与している可能性がある
- これらのマイクロプロテインは、将来的に食事や老化の評価バイオマーカーになる可能性を秘めている
ただし、この研究は49名の観察研究であり、因果関係の証明にはより大規模な介入試験が必要です。「地中海食を食べれば確実にヒューマニンが増える」と断言はできませんが、食事パターンがミトコンドリア機能に影響を与えるという視点は、今後の栄養学・精密医療の分野で大きな意味を持つと考えられます。
まずは今日の食事から、オリーブオイルを一回し加えることから始めてみてはいかがでしょうか。
📝 ご注意ください
・本記事は、信頼できる資料をもとに薬剤師が分かりやすくまとめた一般情報です。
・内容には十分配慮していますが、個別の症状や体質には必ず医師・薬剤師へご相談ください。
・万一誤り等にお気づきの際は、そっとご指摘いただけると幸いです。
📌 参考文献
Vicinanza R, Cammisotto V, Wan J, Yen K, Pastori D, Violi F,
Pignatelli P, Cohen P. Mediterranean diet adherence is
associated with mitochondrial microproteins Humanin and SHMOOSE;
potential role of the Humanin–Nox2 interaction in cardioprotection.
Front Nutr. 2026;12:1727012.
doi: 10.3389/fnut.2025.1727012









