「超加工食品は食べすぎやすい」
これは、前回紹介したNIHの入院RCT(Hall 2019)で、かなりはっきり示されました。
👉同じ栄養設計でも、超加工食品では1日約500kcal多く食べてしまった
という結果です。(まだの方はこちら👇)

すずちゃんじゃあやっぱり、超加工食品は全部ダメってことなの?



そこで終わらせないために、次の研究が出てきたんだよ。
今回取り上げるのは、2025年に Nature Medicine に掲載された最新のランダム化比較試験です。
この研究が問いかけたのは、とても現実的な疑問でした。
「超加工食品でも、健康ガイドライン通りに栄養をきちんと整えたら、最小加工食品と同じ結果になるのか?」
脂質・糖質・食物繊維・塩分などをすべてガイドラインに沿って設計したうえで、
超加工食品と最小加工食品を直接比較しています。
つまりこれは、
「超加工食品にとって、かなり有利な条件」で行われた検証です。
それでも結果は、体重変化に“はっきりとした差”が出ました。
この記事では、
- Hall 2019 の結果をふまえつつ
- 「健康的に設計した超加工食品」でも何が起きたのか
- どこまで言えて、どこからは言えないのか
を、論文の内容に沿ってやさしく整理していきます。



怖がりすぎず、でも過信しない。そのための材料だよ。
この記事で分かること
- 健康ガイドライン通りに設計された超加工食品とは、どんな食事だったのか
- 超加工食品と最小加工食品で、体重変化にどれくらい差が出たのか
- なぜ「栄養を整えても」結果が同じにならなかったのか
- Hall 2019(500kcal研究)と、今回の研究はどうつながるのか
- この研究から言えること/言えないこと
- 日常生活で、超加工食品をどう考えればいいのか



完全に避けるか、気にしないか、じゃないんだね。



“どう付き合うか”を考えるための研究なんだ。
研究デザイン|健康ガイドライン準拠でも比較した最新RCTとは?
この研究は、
「超加工食品=栄養が偏っているから問題なのでは?」
という反論に、正面から答える設計になっています。
ポイントは一言でいうと
👉 超加工食品に“かなり有利な条件”を与えたうえで比較したという点です。
■ 研究の概要(Dicken et al., 2025)
- 対象:過体重〜肥満の成人
- 研究デザイン:ランダム化クロスオーバー試験(RCT)
- 期間:
- 超加工食品中心の食事:一定期間
- 最小加工食品中心の食事:同期間
(※同じ参加者が両方を体験)



人の差じゃなくて、“食事そのものの差”を比べられる設計だね。
■ 最大の特徴:健康ガイドラインに完全準拠
この研究が特別なのは、
両方の食事が「健康的」になるよう厳密に設計されていたことです。
具体的には、
- 総カロリー
- 脂質・炭水化物・たんぱく質の比率
- 食物繊維
- 砂糖・飽和脂肪酸・塩分
すべてが、英国の食事ガイドライン(健康的食事の基準)を満たすよう調整されていました。



えっ、超加工食品でもそこまで揃えてたの?



そう。だからこの研究は
“超加工食品にかなり優しい条件”なんだ。
■ 「自由に食べていい」条件は同じ
参加者には、Hall 2019 と同様に、好きな量を食べてよいと指示されています。
つまり、
- 栄養設計は同じ
- 健康基準も同じ
- 食べる量は自由
👉 違うのは「加工度」だけ
この一点に、研究の焦点が絞られています。
■ Hall 2019 との決定的な違い
ここで、前回の記事との位置づけを整理しておきます。
| 研究 | 何を検証したか |
|---|---|
| Hall 2019 | 超加工食品は なぜ食べすぎるのか |
| Dicken 2025 | 超加工食品は 栄養を整えても同じ結果になるのか |
👉 基礎編 → 応用編
という関係です。
そのため、
先に Hall 2019 を読んでいると、今回の結果がより立体的に理解できます。
結果|健康ガイドライン通りでも体重減少に差が生じた理由
結論から言うと、この研究では
健康ガイドラインを満たした食事であっても、食品の加工度によって体重減少の幅に差が出ました。
重要なのは、
「超加工食品で太った」のではなく、
「どちらも体重は減ったが、減り方が違った」という点です。
■ 観察された体重変化の違い
同じ参加者が、
- 超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)中心の食事
- 最小加工食品(Minimally Processed Foods:MPF)中心の食事
を、それぞれ同じ条件で経験したところ、次の結果が得られました。
👉 どちらの食事期間でも体重は減少
👉 ただし、最小加工食品の方が体重減少幅は約2倍大きかった
具体的には、
- 最小加工食品(MPF)群:平均 −2.06% の体重減少
- 超加工食品(UPF)群:平均 −1.05% の体重減少
という差が確認されています。



えっ、超加工食品でも痩せてはいるんだね?



そう。ただ、“同じ条件なら、どちらがよりスムーズに減るか”がポイントなんだ。
■ なぜ「栄養を整えても」差が残ったのか?
この研究では、両方の食事が
- 総カロリー
- 脂質・炭水化物・たんぱく質の比率
- 食物繊維
- 砂糖・飽和脂肪酸・塩分
といった点で、健康ガイドラインを満たすよう厳密に設計されていました。
それでも体重減少に差が出た理由として、論文では
「食品の加工度に伴う性質の違い」が影響した可能性が示唆されています。
① 食べるスピードが自然と速くなりやすい
超加工食品は、
- 柔らかい
- 噛む回数が少なくて済む
- 食感が均一で食べやすい
といった特徴を持っています。
その結果、
- 1分あたりの摂取量(kcal/分)が高くなりやすい
- 満腹を感じる前に食事が進みやすい
という状態が起こりやすくなります。



“早く食べられる”って、実は体重調節には不利なんだ。
② 固形食品としてのエネルギー密度が高かった
この研究では、両方の食事が
健康ガイドラインを満たすように設計されていました。
しかし実際に提供された食事を分析すると、
超加工食品(UPF)の方が、食事全体としてエネルギー密度が高い
という違いがありました。
具体的には、
- 最小加工食品(MPF):約 1.25 kcal/g
- 超加工食品(UPF):約 1.60 kcal/g
と、超加工食品の方が
同じ重さあたりに含まれるカロリーがより多く「凝縮」されていました。
この研究では、エネルギー密度を人工的に揃えるのではなく、
「健康的な食品を、現実のスーパーで選んだらどうなるか」
という実生活に近い条件が重視されています。
その結果、
健康ガイドラインを満たすように設計しても、超加工食品は性質上、エネルギー密度が高くなりやすい
という現実が、そのまま試験に反映されました。
エネルギー密度が高い食事では、
- 胃の容量が十分に満たされる前に
- 多くのカロリーを摂取できてしまう
ため、満腹感が遅れやすくなります。
さらに超加工食品は、柔らかく噛みやすいものが多いため、
「高エネルギー密度 × 食べやすさ」が組み合わさり、
無意識のうちに摂取量が増えやすくなった可能性があります。
このような食品の物理的な性質の違いが積み重なった結果、
超加工食品の期間では、
体重は減少したものの、その減少幅が小さくなった
と考えられます。
③ 生理的な満腹シグナルが働きにくい可能性
さらに、研究では
- 最小加工食品では
👉 食欲調節に関わる生理的反応がより適切に働きやすい - 超加工食品では
👉 こうした自然なブレーキが弱くなる可能性
も示唆されています。



意志の問題って言われがちだけど、体の反応も関係してるんだね。



うん。環境としての“食事の形”が、行動に影響してる。
■ この結果が示す本当の意味
この研究が伝えているのは、
- 超加工食品でも
👉 栄養を整えれば、体重は減りうる - しかし
👉 同じ条件なら、最小加工食品の方が体重はより減りやすい
という、現実的で中間的な結論です。
つまり、
健康的に設計された超加工食品は“無害”とは言えないが、ただちに“有害”とも言い切れない
これが、Dicken 2025 の結果から読み取れる最も正確なメッセージです。
この研究から言えること/言えないこと【超加工食品研究の正しい読み解き方】
この研究は、「超加工食品=悪」「加工食品はすべて不健康」と結論づけるものではありません。
一方で、加工度という視点が体重調節に影響する可能性を、非常に厳密な条件で示しています。
ここでは、研究結果から言えることと、慎重に考えるべき点(言えないこと)を分けて整理します。
✔ この研究から言えること
① 健康ガイドラインを守っても、加工度の違いで体重変化に差が出うる
この試験では、
超加工食品・最小加工食品のどちらも
健康ガイドラインを満たすように設計されていました。
それにもかかわらず、
- 両群とも体重は減少したが
- 最小加工食品の方が、体重減少幅が約2倍大きかった
という結果が示されました。
つまり、「栄養バランスが同程度でも、食品の加工度によって体重調節のしやすさが変わる可能性がある」
ことが、この研究から読み取れます。
② 超加工食品は、無意識の摂取量が増えやすい性質を持つ
超加工食品中心の食事では、
- エネルギー密度が高くなりやすい
- 噛みやすく、食べるスピードが速くなりやすい
といった食品の物理的性質が重なり、
結果としてエネルギー摂取量が多くなりやすい傾向が見られました。
これは「意志の弱さ」ではなく、
食品設計そのものが食行動に影響する可能性を示しています。
③ 「健康的に見える超加工食品」でも万能ではない
近年は、
- 高たんぱく
- 低脂質
- 食物繊維添加
など、「健康的に設計された超加工食品」も増えています。
しかし本研究は、
健康ガイドラインを満たすよう工夫しても、
最小加工食品と同等の体重調節効果が得られるとは限らない
という現実を示しました。
⚠ この研究から言えないこと(注意点)
① 超加工食品を完全に避けるべき、とは言えない
この研究では、
- 超加工食品群でも体重は減少している
- 健康ガイドラインを守れば、一定の健康効果は得られる
ことも同時に確認されています。
したがって、
「超加工食品は食べてはいけない」
「少しでも食べたら太る」
といった極端な解釈は、この研究の結論ではありません。
② 長期的な健康影響までは断定できない
この試験は、
数週間〜数か月規模のランダム化比較試験です。
そのため、
- 数年単位での体重変化
- 心血管疾患や寿命への影響
といった長期的アウトカムまでは評価していません。
長期影響については、
別の観察研究やメタ解析と合わせて考える必要があります。
③ 個人差や生活環境の影響は考慮が必要
この研究は、
- 食事が完全に提供される
- 食事環境が厳密に管理されている
という実験条件下で行われています。
現実の生活では、
- 外食・間食
- 運動量
- 仕事やストレス
などの影響も大きく、
結果がそのまま全員に当てはまるわけではありません。



大事なのは、“超加工食品=ダメ”と決めつけることじゃなくて、
どんな性質を持った食品なのかを理解して選ぶことなんだよ。
日常生活でどう考えればいい?超加工食品との上手な付き合い方
この研究を読むと、
「じゃあ超加工食品は全部やめたほうがいいの?」
と感じるかもしれません。
でも、研究が示しているのは
白か黒かの二択ではない現実的な答えです。
ここでは、論文の結果をもとに、
日常生活での考え方を整理してみましょう。
① 超加工食品は「便利さ」と引き換えに注意点がある
超加工食品は、
- 忙しいときでもすぐ食べられる
- 保存性が高く、価格も安定している
など、現代の生活に欠かせない側面があります。
一方で、この研究が示したように、
- エネルギー密度が高くなりやすい
- 食べやすく、満腹感に気づきにくい
という性質も併せ持っています。
つまり、「使いやすいけれど、無意識に食べすぎやすい食品」
として理解することが大切です。
② 「健康そうに見える」表示だけで判断しない
高たんぱく、低脂質、食物繊維入り——
一見すると健康的に見える超加工食品も増えています。
しかしこの研究は、
健康ガイドラインを満たしていても、最小加工食品と同じ体重調節効果が得られるとは限らない
ことを示しました。



“健康って書いてあるから安心”って思いがちだよね…



うん。だから“表示”よりも食べたときの満腹感や噛みごたえを大事にしてほしいな。
③ 迷ったら「噛む回数が多い方」を選ぶ
日常で使いやすい判断基準のひとつが、
「よく噛む必要があるかどうか」です。
- 形が残っている
- 繊維が多く、噛みごたえがある
- 食べるのに時間がかかる
こうした食品は、満腹感を得やすく、
結果的に摂取量のコントロールにつながりやすい傾向があります。
④ 超加工食品は「主役」ではなく「補助」と考える
研究結果を踏まえると、
- 毎食の中心を最小加工食品にする
- 超加工食品は補助的に使う
という位置づけが、現実的で続けやすい選択です。
「忙しい日は使ってもいい。でも、毎日のベースにはしない」
このくらいの距離感が、
長期的には体重管理や健康維持に役立つ可能性があります。



完璧を目指さなくていいよ。
研究が教えてくれるのは、“少し選び方を変えるだけで結果が変わる”ってことだから。
まとめ|超加工食品を「避ける」より「理解して選ぶ」時代へ
今回紹介した Nature Medicine(2025) の研究は、
超加工食品について、白黒つけるような結論を出すものではありません。
しかし同時に、
「栄養バランスを整えただけでは解決しない部分がある」
ことを、はっきりと示しています。
✔ この記事の要点
- 健康ガイドラインを満たす食事でも、
食品の加工度によって体重変化に差が出た - 超加工食品の期間でも体重は減少したが、
最小加工食品の方が約2倍の減少幅を示した - その背景には、
エネルギー密度の高さ・食べやすさ・満腹感の得にくさ
といった食品の性質が関与している可能性がある - これは意志の問題ではなく、
食品設計が食行動に影響することを示した結果である
🌱 これからの食事との向き合い方
この研究が教えてくれるのは、
「完璧な食事を目指すこと」ではありません。



全部気をつけなきゃって思うと、ちょっと疲れちゃうかも…



大丈夫。選び方を少し知るだけでいいんだよ。
- 超加工食品を完全に排除しなくていい
- でも、毎日の主役にしすぎない
- 噛みごたえや満腹感を感じられる食品を
自然と増やしていく
そんなゆるやかな調整でも、
体重や健康との付き合い方は変わっていく可能性があります。
🔭「栄養」だけでなく「食べ方」まで考える健康へ
これからの健康づくりでは、
- カロリー
- 栄養素のバランス
に加えて、
- その食品が、どう食べられるか
- 体がどう反応するか
まで含めて考える視点が、
ますます大切になっていくでしょう。
超加工食品を
怖がりすぎず、でも軽く見すぎない。
科学を味方につけながら、
自分に合った食事を選んでいく——
そんな未来へのヒントとして、
この研究が役立てばうれしいです。
📝 ご注意ください
・本記事は、信頼できる資料をもとに薬剤師が分かりやすくまとめた一般情報です。
・内容には十分配慮していますが、個別の症状や体質には必ず医師・薬剤師へご相談ください。
・万一誤り等にお気づきの際は、そっとご指摘いただけると幸いです。
参考文献
- Dicken SJ, Jassil FC, Brown A, et al. Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trial. Nature Medicine. 2025;31:3297–3308. https://www.nature.com/articles/s41591-025-03842-0
- Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake. Cell Metab. 2019;30(1):67-77.e3. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7946062/









