「健康のために運動したい。でも、毎日まとまった時間は取れない……」
そんなとき、気になるのが「短い時間でも、しっかり体を動かせば意味があるの?」という疑問です。
すずちゃん1日10分くらいならできそうだけど、それでも健康のためになるのかな?



その疑問を考えるヒントになるのが、運動の“強度”だよ。同じ1分でも、体を動かす強さによって、健康との関わり方が違う可能性があるんだ。
2025年に発表された7万人以上の研究では、高強度の身体活動1分が、中強度の約4分と同程度の全死亡リスクの低さに対応すると推定されました。ただし、これは人々の活動とその後の健康を追跡した結果で、「1分動けば必ず同じ効果が得られる」という意味ではありません。(出典)
では、高強度運動とはどんな動きで、日常生活にどれくらい取り入れるとよいのでしょうか?
この記事でわかること
- 高強度運動の「1分の価値」と、研究から言えること
- 日常生活でできる高強度の動きと、強度の目安
- 数分から始める方法と、1日合計10分を目指すときの注意点
高強度運動の1分には、どれくらいの価値がある?
健康のための運動は、時間の長さだけでなく「どれくらいの強度で動くか」も大切かもしれません。 今回の研究では、高強度の身体活動が、中強度より短い時間で同程度の死亡・疾病リスクの低さと関連していました。(出典)
7万人以上の「実際の動き」を測定した研究
研究チームは、英国の大規模調査「UK Biobank」に参加した73,485人を分析しました。手首の活動量計で日常の動きを測り、その後、平均約8年間の死亡や病気の発症を追跡しています。(出典)
特徴は、「週に何分運動しましたか?」という自己申告ではなく、生活の中の短い動きも機器で捉えたことです。ジムなどで行う運動だけでなく、日常生活の身体活動も含めて調べています。
高強度1分は、中強度の約4〜9分に相当する場合も
死亡や心血管・代謝系の病気について、同程度のリスク低下と関連する活動時間を比較すると、次のような換算値が得られました。
| 評価した項目 | 高強度1分に相当する中強度の時間 |
|---|---|
| 全死亡(原因を問わない死亡) | 約4.1分 |
| 心血管疾患による死亡 | 約7.8分 |
| 心筋梗塞・脳卒中・心不全・心血管死をまとめた指標 | 約5.4分 |
| 2型糖尿病の発症 | 約9分 |
※研究モデルから推定した換算比の中央値。病気や評価条件によって値は異なります。



じゃあ、短く激しく動けば、長く運動するのと同じ効果があるってこと?



そこは少し注意が必要だよ。今回は、死亡や病気のリスクとの関連から時間を換算したもの。実際に運動を置き換えて、同じ効果が出るかを確かめたわけではないんだ。
観察研究なので、もともとの健康状態などの影響を完全には除けません。「1分動けば、誰でも同じ効果が得られる」という保証ではない点は押さえておきましょう。
では、日常生活ではどのような動きが「高強度」に当たるのでしょうか?
高強度運動とは?日常生活では「息の弾み方」が目安


高強度運動と聞くと、全力疾走やハードなトレーニングを想像するかもしれません。しかし、必ずしも限界まで追い込む運動を指すわけではありません。
「会話を続けるのが難しい」が一つの目安
運動中の強度をつかむ簡単な方法が、会話のしやすさを見る「トークテスト」です。米国疾病予防管理センター(CDC)は、次のように説明しています。(出典)
- 中強度: 会話はできるが、歌うのは難しい
- 高強度: 息継ぎをしないと、数語程度しか話せない
ただし、これは自分にとっての負荷を知る目安です。同じ動きでも、体力によってきつさは変わります。
また、今回の論文は活動量計で強度を分類しているため、「息が弾んだから、研究上の高強度と必ず同じ」とは限りません。 体感の目安と研究の測定方法は、分けて考えましょう。(出典)
階段や移動中の動きも候補になる
日常生活の中で高強度になり得る活動には、階段を上ることや、移動中の非常に速い歩行などがあります。こうした短い高強度活動は、専門的には「VILPA」と呼ばれ、研究されています。(出典)
一方、一般的な速歩きは中強度に分類されることが多く、「速歩き=高強度」ではありません。 ジョギングや縄跳びなどは、高強度の代表例です。



じゃあ、階段は走って上った方がいいの?



走る必要はないよ。まずは転ばないことが大切。強度を上げることばかり考えず、自分の体力や足元の安全に合わせよう。
高強度を目指して、無理に息を切らす必要はありません。まずは、自分が普段どのくらいの強さで動いているかを知るところから始めましょう。
次に気になるのは、「それを1日に何分くらい行えばよいのか」という点です。
高強度運動は1日何分?数分から始め、慣れたら合計10分も選択肢に


「10分できなければ意味がない」と考える必要はありません。 日常生活の短い高強度活動を調べた研究では、1日数分の活動でも、死亡リスクの低さとの関連が報告されています。(出典)
1日約4〜5分の活動でも、死亡リスクの低さと関連
2022年の研究では、余暇に運動をしていない25,241人を対象に、階段を上るなどの短い高強度活動と、その後の死亡との関連を調べました。
その結果、1日合計4.4分の活動は、こうした活動がない場合に比べて、全死亡リスクが約26〜30%低いことと関連していました。活動は主に、1〜2分以内の短い動きとして積み重なっていました。(出典)
ただし、この数字は観察研究による相対的な差です。「毎日4.4分の運動を追加すれば、死亡リスクが必ずこれだけ下がる」と示したものではありません。また、今回の2025年論文と同じUK Biobankのデータを使った研究です。
それでも、まとまった運動時間を確保しにくい人にとって、短い活動の積み重ねにも目を向ける根拠になります。
合計10分は「最適値」ではなく、実践目標の一つ
今回紹介した研究からは、「1日10分が最もタイパがよい」「10分を超えると効果が頭打ちになる」とは言えません。
そこで本記事では、体力や体調に合わせて数分から取り入れ、無理なく続けられるようになったら、1日合計10分程度を目標の一つにすると考えます。これは研究が定めた推奨時間ではなく、生活に取り入れるための提案です。



10分続けて動かないといけないわけではないんだね?



うん。短い活動を積み重ねる考え方でいいよ。ただし、休憩を含む10分と、高強度で動いた時間の合計10分は別なんだ。
なお、分けて行う場合と連続して行う場合で、あらゆる効果が同じと確認されたわけではありません。
普段の歩行も合わせて、週全体で考える
WHOの成人向けの目安は、週150〜300分の中強度活動、または週75〜150分の高強度活動、あるいは両者の組み合わせです。
高強度活動を毎日10分行うと週70分なので、それだけでは週75分に少し届きません。ただし、すべてを高強度にする必要はなく、普段の速歩きなどと組み合わせて考えられます。
「毎日必ず10分」と義務にするより、無理のない活動を生活の中で続けること。 時間効率だけでなく、続けやすさも大切にしましょう。
日常生活への取り入れ方は?いつもの動きに短い活動を足す


取り入れるときは、「いつ・どこで動くか」を一つ決めると、具体的な行動に移しやすくなります。まずは生活の中で、安全に体を動かせる場面を探してみましょう。
通勤・散歩・自宅で、できることを一つ選ぶ
以下は、活動を取り入れるための例です。研究で効果が検証された運動メニューではなく、体力や環境に合わせて選ぶための提案です。
| 場面 | 取り入れ方の例 |
|---|---|
| 通勤や買い物 | エレベーターでの移動の一部を階段にする |
| 散歩 | 運動に慣れていれば、安全な区間で短いジョギングを挟む |
| 自宅 | エアロバイクがあれば、軽くこぐ時間の途中で短く負荷を上げる |
階段や速い移動など、日常生活の動きも高強度活動になり得ます。ただし、これらを行えば必ず高強度になるわけではありません。 動く速さや負荷によって強度は変わります。
階段を駆け上がったり、人混みで急いだりする必要はありません。公共の場所では、運動強度よりも周囲と足元の安全を優先しましょう。



まずは、職場で階段を使うところからならできそう!



いいね。最初から毎回きつくする必要はないよ。まずは安全に続けられる動き方を見つけよう。
普段動いていない人は、いきなり高強度にしない
運動習慣がない人は、まず歩行などの軽めの活動から始めましょう。CDCも、普段活動していない人が高強度運動を始める場合や、心臓病・糖尿病・関節の病気などがある場合には、事前に医師へ相談するよう勧めています。(出典)
また、胸の痛み、めまい、普段と違う強い息切れが出たら、目標時間に届いていなくても中止してください。強い症状や続く症状がある場合は、速やかに医療機関へ相談しましょう。
高強度だけに偏らず、歩行や筋トレも続ける
時間効率がよい可能性があるからといって、普段の歩行や筋トレをすべて高強度運動に置き換える必要はありません。身体活動のガイドラインでは、有酸素活動に加えて、週2日以上の筋力を高める活動も推奨されています。(出典)
高強度活動は、日々の運動に加えられる選択肢の一つ。 自分に合う動き方を選び、無理なく積み重ねていきましょう。
まとめ|短い時間でも、動き方に目を向けよう
高強度の身体活動は、短い時間でも死亡や病気のリスクの低さと関連していました。ただし、観察研究の結果であり、運動時間を置き換えれば同じ効果が得られると保証するものではありません。
1日合計10分は、研究で決まった最適値ではなく、慣れてきた人の実践目標の一つです。 数分の活動との関連も報告されているため、最初から10分を達成しようと焦る必要はありません。
まずは、自分の体力に合った動きを、安全な場面で取り入れることから。普段の歩行や筋トレも大切にしながら、続けられる方法を選びましょう。
参考文献
- Biswas RK, Ahmadi MN, Bauman A, Milton K, Koemel NA, Stamatakis E. Wearable device-based health equivalence of different physical activity intensities against mortality, cardiometabolic disease, and cancer. Nature Communications. 2025;16:8315. doi:10.1038/s41467-025-63475-2
- Stamatakis E, Ahmadi MN, Gill JMR, et al. Association of wearable device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity with mortality. Nature Medicine. 2022;28:2521–2529. doi:10.1038/s41591-022-02100-x
- Centers for Disease Control and Prevention. How to Measure Physical Activity Intensity.
- Centers for Disease Control and Prevention. Adding Physical Activity as an Adult.









