すずちゃん最近、糖質オフの食品ってほんと増えたよね!糖質を減らせば健康になれるのかな?



実はね、2025年に発表された174件の臨床試験をまとめたメタ分析が、まさにその答えを出しているんだよ。
炭水化物(糖質)を減らすと、体重や中性脂肪は下がりやすい。
でも一方で、悪玉コレステロール(LDL)の上昇や長期的なリスクも指摘されているのが現実です(出典)。
では、どのくらい減らすのがいいのか?
そして、「健康的に続けられる糖質制限」は本当に存在するのか?
この記事では、最新のメタ分析(Feng et al., 2025)をもとに、
短期のメリット・長期のリスク・そして日本人に合った糖質バランスまでを、
薬剤師みどりんがやさしく解説します。
🌾【この記事でわかること】
- 🔬 最新の174試験メタ分析が示した「糖質制限の本当の効果」
- ⚖️ 短期◎・長期△──体重・中性脂肪・LDLの変化を科学的に比較
- 🍳 ケト/低炭水化物/中等度制限の違いと“どの程度が最適か”
- 🥑 何で置き換えるか(脂質・たんぱく質の質)が健康を左右する理由
- 🍙 日本人の食事摂取基準(2025年版)とロカボから見る現実的な落としどころ
🧪174試験のメタ分析が示した「短期◎・長期△」の真実



174試験もまとめたなんて、すごいね!どんなことがわかったの?



そうなの。Fengたち(2025)のメタ分析では、27カ国・1万1,481人のデータを統合して、“炭水化物制限が健康にどう影響するか”を詳しく調べたんだよ(出典)。
🔹短期では体重・中性脂肪に効果、長期では慎重に
この研究では、炭水化物制限食(CRD)が体重・脂質・体組成の改善に寄与することが確認されました。
介入期間を問わない平均的な効果として、次のような変化が報告されています。
- 体重:平均 −1.8 kg(対照群に比べ有意に減少)
- 中性脂肪(TG):約 −15 mg/dL(明確な改善)
- HDL(善玉コレステロール):+2.9 mg/dL(わずかに上昇)
特に体重と中性脂肪の改善効果は、介入初期(3〜6か月)に最も顕著と考えられます。
厳しい制限(ケトジェニックダイエットなど)を行ったサブグループでは、
体重減少が−3 kg前後に達するケースもありました。
🔹 置き換えの質が“健康の分かれ道”
一方で、炭水化物を減らした「代わりに何を増やすか」によって、結果が大きく異なります。
- 飽和脂肪酸中心の食事(肉・バターなど)に置き換えると、
→ LDL(悪玉コレステロール)が上昇する傾向 - 植物性たんぱく質や不飽和脂肪酸(魚・豆・ナッツ類)で置き換えると、
→ 心血管リスクの低下が示されるケースも
つまり、健康を左右するのは「糖質を減らす量」ではなく、
“何で置き換えるか”という質の選び方なのです。
🔹 長期では効果が平均化、LDL上昇にも注意
12か月を超える長期試験では、体重や脂質の改善が次第に平均化し、
LDLの上昇や筋肉量(除脂肪体重)の減少が見られるケースも報告されています。
これは、制限を続ける中で脂質バランスが偏ることや、エネルギー不足による筋肉減少が関係すると考えられています。



短期間の変化は目に見えやすいけど、“何を減らすか”より“どう続けるか”が健康の鍵。
糖質制限は一時的なリセットではなく、体質に合わせた調整として取り入れるのが理想です。
🔹 まとめ
- 炭水化物制限は短期的に体重・中性脂肪・HDLを改善
- ただしLDL上昇や筋肉量減少の報告もあり、長期の安全性には注意
- 「糖質を減らす量」よりも「置き換える質」が健康を左右する



なるほど…“糖質を減らすだけ”じゃダメなんだね。



うん。次は“どのくらい減らせばいいのか?”を見てみようか。
ケト・低炭水化物・中等度の違いを知ると、自分に合ったバランスが見えてくるよ。
🍞どの程度の炭水化物制限が「ちょうどいい」?



糖質制限って、“どこまで減らすか”がよくわからないよね。



そうだね。Fengたち(2025)は、炭水化物の割合ごとに健康への影響を比較しているんだ(出典)。
🔹 炭水化物の摂取量で変わる健康効果
このメタ分析では、研究ごとに炭水化物摂取エネルギー比を分類して解析しています。
一般的な基準は以下の通りです:
| 区分 | 炭水化物比率 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| ケトジェニック(厳格) | 10%未満 | 炭水化物を極端に制限。主に脂質でエネルギーを補う |
| 低炭水化物 | 10〜26% | いわゆる糖質制限ダイエット。主食を大幅に減らす |
| 中等度制限 | 26〜45% | 炭水化物を減らしつつ、食物繊維や全粒穀物を確保 |
| 通常食(対照) | 45〜65% | 一般的な食事バランス、日本の食事摂取基準もこの範囲 |
🔹中等度の制限が最も安定した改善を示す
Fengらの解析によると、
- ケトジェニック食
→ 体重・中性脂肪は大幅に減少するが、LDL上昇と除脂肪体重の減少が顕著。
→ 続けるのが難しく、長期データでは持続率が低下。 - 低炭水化物食(10〜26%)
→ 体重減少効果と脂質改善のバランスが良く、短期的な代謝改善に有効。
→ ただし、脂質の種類が不適切だとLDLが上がる可能性も。 - 中等度制限(26〜45%)
→ 体重減少は穏やかだが、LDL上昇が少なく、HDL改善が安定。
→ 炭水化物源に全粒穀物・豆類・果物を含むと、長期的な心血管リスク低下につながる傾向。
🔹 極端な制限は「U字型リスク」を生む
炭水化物摂取量と死亡リスクの関係を調べたSeidelmannら(2018)の研究では、
「炭水化物摂取が多すぎても少なすぎても死亡リスクが上昇する」U字型の関係が報告されています(出典)。
- 最もリスクが低い範囲:炭水化物摂取 約50〜55%
- リスクが上昇する範囲:
- 低炭水化物(<40%)
- 高炭水化物(>70%)
この結果は、極端な制限がかえって健康を損なう可能性を示しています。
特に動物性脂質や精製肉を多く摂る「動物性ローカーボ」は死亡リスクが高く、
植物性たんぱく質や不飽和脂肪酸中心の「植物性ローカーボ」はリスクが低下する傾向でした。
🔹 日本人にとっての“ちょうどいい範囲”
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、
総エネルギーの50〜65%を炭水化物から摂ることが推奨されています。
これは、上記U字型リスクの「最も安全な範囲」と重なります。



つまり、“日本人の標準的な食事”って、科学的にも理にかなってるってことなんだよ。



へえ〜、じゃあ“極端な糖質オフ”より“バランスを整える”ほうが健康的なんだね。
🔹 まとめ
- ケト(10%未満):短期減量には有効だが、LDL上昇・持続性に課題
- 低炭水化物(10〜26%):体重・TG改善のバランス型
- 中等度(26〜45%):最も安定、HDL上昇・LDL悪化少ない
- 最適範囲は50〜55%前後(Seidelmann 2018/厚労省基準)



“糖質は悪”ではなく、とり方と割合の問題。
ごはんやパンを完全に抜くより、全粒穀物や豆類で質を上げるほうが、長く健康を守れます。
🧭短期 vs 長期 —— 変化の“質”が変わる



最初は体重がスッと落ちるのに、続けてるうちに変化が見えにくくなるのはなんで?



いい質問だね。短期は“見た目の代謝変化”、長期は“体の中の改善”が進む時期なんだ(出典)。
🔹 短期(3〜6か月):代謝が一気に切り替わるフェーズ
炭水化物を制限すると、体内のグリコーゲン(糖の貯蔵)と水分が減ることで体重が早く落ちます。
さらに、インスリン分泌が抑えられ、脂質代謝(脂肪燃焼)にスイッチすることで、
中性脂肪(TG)や体脂肪量が大きく低下することが確認されています。
- TG:平均 −15.1 mg/dL
- 収縮期血圧(SBP):−2.05 mmHg
- 体脂肪量(FM):有意な減少
- HDL(善玉コレステロール):+2.9 mg/dL
このように、初期(3〜6か月)では代謝の「リセット効果」が明確に現れます。
いわば「堰を切ったように代謝が流れ出す」時期です。
🔹 中期(6〜12か月):体重変化はピーク、その後は安定フェーズへ
Soltaniら(2023)の用量反応メタ分析では、炭水化物摂取量を減らすほど体重減少効果が大きく、
6〜12か月で最大の減少(−3〜6 kg)を示しました(出典)。
- 6か月時点:炭水化物5%で −3.96 kg
- 12か月時点:炭水化物10%で −6.26 kg
一方、12か月を超えると用量反応は非線形となり、炭水化物摂取量が30%のときに最大減少が観察されました。
炭水化物が多すぎても少なすぎても効果は鈍化し、これは代謝の適応や食事継続の難しさなどが関与していると考えられています
🔹 長期(12か月以降):見た目の変化より“中の改善”が進む
Fengら(2025)のメタ回帰分析によると、
介入期間が長いほど、心血管疾患リスク指標により大きな改善が見られました。
| 指標 | 長期介入での変化 | 傾向 |
|---|---|---|
| LDL–HDL比 | β = −0.02, p < 0.001 | 長期ほど改善 |
| ApoB–ApoA1比 | β = −0.001, p < 0.001 | 長期ほど改善 |
| IL-6(炎症マーカー) | β = −0.03, p < 0.001 | 長期ほど炎症抑制 |
つまり、長期的な炭水化物制限は“順応”ではなく、“深部の回復”をもたらしていたのです。
体重変化が停滞しても、血管や炎症レベルでは改善が積み上がっていく段階に入ります。
🔹 “減る”から“整う”へ —— 効果のフェーズシフト



短期は“体重”が変わって、長期は“体の質”が変わるんだよ。
数字に出ない改善も、少しずつ積み重なっていくの。
💬 短期:代謝が切り替わる“リセット期”
💬 中期:体重がピークを迎える“変化期”
💬 長期:血管・炎症が整う“安定期”
このように、炭水化物制限の時間軸は「減る」から「整う」へと質的に変化していきます。
🔹 まとめ
- 短期(3〜6か月):体重・TG・HDLの変化が大きい
- 中期(6〜12か月):体重減少がピークを迎え、その後安定化
- 長期(12か月〜):LDL比・ApoB/ApoA1比・IL-6がさらに改善
- “順応”とは停滞ではなく、深いレベルの代謝改善を意味する



最初の変化が終わっても、ちゃんと体の中ではいいことが起きてるんだね!



そう。だから“短期で終わらせない工夫”が、健康を積み上げるカギなんだよ。
🍳置き換えるなら“質”が鍵 —— 何を足すかで結果が変わる



炭水化物を減らすときって、代わりに何を食べればいいの?



それがね、“何を減らすか”より、“何で置き換えるか”が健康を左右するんだよ(出典)。
🔹 Fengら(2025)が示した「置き換え戦略」の違い
このメタアナリシスでは、炭水化物を減らした分を脂肪、たんぱく質、またはその両方で補った場合の健康効果を比較しています。
| 置き換え方 | 主な変化(方向性) | 解釈メモ |
|---|---|---|
| 脂肪 | TG↓、HDL↑、体重↓、体脂肪↓ / LDL↑、TC↑ | 体重やTGは改善するが、LDLと総コレステロールが上昇。脂肪中心の置き換えではLDL管理が重要。 |
| たんぱく質 | LDL↓、TC↓ / 除脂肪量(LM)=有意な変化なし | LDLと総コレステロールを下げる特徴あり。筋肉量(LM)の維持に有意差はないが、悪化もしにくい。 |
| 脂肪+たんぱく質 | 血圧↓、脂質プロファイル改善、TNF-α↓、体組成指標改善 | 最も広範な改善を示した戦略。血圧・炎症マーカー・脂質のすべてに好影響。 |



つまりね、糖質オフをするなら、“何を足すか”で結果が変わるってこと。
脂肪だけだとLDLが上がりやすいけど、たんぱく質をうまく組み合わせると、
脂質バランス全体が整いやすくなるの。



へぇ〜!“減らすより、どう補うか”が大事なんだね。
🔹 実践のポイント
- 脂肪のみで補う場合は、LDL・TCの上昇リスクを意識し、定期的な血液チェックを。
- たんぱく質中心で補うと、LDL・TCを下げる効果が期待できる。
- 脂肪+たんぱく質のバランス型が、血圧・脂質・炎症マーカーを総合的に改善。
🔹 補足:他研究が示す“質の違い”の影響
Fengら(2025)は、脂肪やたんぱく質の「種類(動物性・植物性)」までは分析していませんが、
他の研究では、置き換えの「質」によって寿命や疾患リスクが変わることが報告されています。
| 研究 | 主な内容 | 出典 |
|---|---|---|
| Seidelmann et al., 2018 | 炭水化物が少なすぎても多すぎても死亡リスク上昇(U字型)。 ただし植物性ローカーボでは全死因死亡リスクが低下。 | 出典 |
| Fung et al., 2010 | 植物性たんぱく質中心のローカーボ食で心血管疾患リスクが低下。 | 出典 |
| Ghorbani et al., 2023 | 植物性中心の低炭水化物食は全死因死亡リスクを低下させるが、LDLやCRPの変化までは報告なし。 | 出典 |
🔹 日本人に合う「ゆるめ×植物中心」スタイル



日本人はもともと炭水化物比率が高いから、
いきなり極端に減らすより、“ゆるく・質を上げる”のが合ってるんだよ。
炭水化物を完全に抜くのではなく、
- 全粒穀物や雑穀を選ぶ
- 魚・豆・ナッツ・野菜を多く摂る
といった“ゆるやか糖質制限”が理想的です。
これは日本でも広く知られる「ロカボ®」の考え方に近く、
無理なく続けやすく、血糖コントロールや脂質改善にも好影響が期待できます(出典)。
🔹 まとめ
- 炭水化物制限は「何を減らすか」より「何で置き換えるか」が重要
- 脂肪中心:TG↓・HDL↑だが、LDL↑・TC↑
- たんぱく質中心:LDL↓・TC↓
- 脂肪+たんぱく質:血圧・炎症・体組成も改善
- 植物性中心のローカーボは全死因死亡リスクを下げる



糖質オフって“減らすこと”より、“補うもの選び”が大事なんだね!



そうそう。減らすより、“整える”が健康のコツなんだよ🍀
🧭 まとめ:炭水化物制限の“本当の姿”
| 観点 | 科学的に確認されたこと(出典) |
|---|---|
| 短期効果(3〜6か月) | 体重 −1.7〜3kg、TG −15mg/dL、HDL↑。代謝改善が早期に出る(Feng 2025) |
| 長期効果(12か月〜) | LDL–HDL比・炎症マーカー(IL-6)が改善。体重減少は維持または微減(Feng 2025, Soltani 2023) |
| 置き換え栄養素 | 脂肪+たんぱく質のバランス型が最も有効。脂肪のみではLDL上昇(Feng 2025) |
| リスク | 極端な制限(30%以下)はLDL上昇・栄養不足・継続困難(Feng 2025) |
| 最適ゾーン | 炭水化物比率50〜55%で死亡リスクが最も低い(Seidelmann 2018) |
✅ 結論
炭水化物制限は「やれば健康」ではなく、
“やり方次第で良くも悪くもなる”食事法。
科学が導く最適解は、
👉 極端を避けて、中庸×質の良い置き換え。
減らすより「整える」。
それが、持続可能で“健康にいい”糖質制限の本当の形です🍀



減らすより、整える──いい言葉だね。



うん。科学も経験も、そこにたどり着いてるんだよ🌾
📝 ご注意ください
・本記事は、信頼できる資料をもとに薬剤師が分かりやすくまとめた一般情報です。
・内容には十分配慮していますが、個別の症状や体質には必ず医師・薬剤師へご相談ください。
・万一誤り等にお気づきの際は、そっとご指摘いただけると幸いです。
参考文献
- Feng Y, et al. Effects of carbohydrate restriction diets on cardiovascular and metabolic risk factors: A systematic review and meta-analysis of 174 randomized controlled trials. The American Journal of Clinical Nutrition, 2025. https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(25)00528-3/fulltext
- Seidelmann SB, et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. The Lancet Public Health, 2018;3(9):e419-e428. https://www.thelancet.com/article/S2468-2667(18)30135-X/fulltext
- Soltani S, Jayedi A, Abdollahi S, Vasmehjani AA, Meshkini F, Shab-Bidar S.
Effect of carbohydrate restriction on body weight in overweight and obese adults: a systematic review and dose-response meta-analysis of 110 randomized controlled trials. Front Nutr. 2023 Dec 6;10:1287987. doi: 10.3389/fnut.2023.1287987. eCollection 2023.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38125726/ - Fung TT, et al. Low carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: Two cohort studies. American Journal of Clinical Nutrition, 2010;92(4):760-768. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2989112/
- Ghorbani M, et al. Overall, plant-based, or animal-based low carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: A systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases, 2023;33(6):1182-1195. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568163723001563
- 一般社団法人 食・楽・健康協会. ロカボ(R)入門ガイド. https://therres.jp/r-open/img/open_201601_1.pdf









