糖尿病の正しい食事はどれ?2024年ガイドラインと科学的根拠で考える

白衣を着た薬剤師のうさぎ・みどりんが資料を指しながら説明し、オレンジの服のすずちゃんがうなずいている。テーブルの上には野菜・魚・オリーブオイルなど地中海食風の料理が並び、背景は淡い緑色で清潔感と安心感のある雰囲気のイラスト。

この記事は糖尿病の食事療法に関する研究やガイドラインをもとに解説していますが、糖尿病治療の基本は医療機関での診断と継続的な治療です。自己判断で食事だけに頼るのではなく、必ず主治医と相談のうえで実践してください。

すずちゃん

糖尿病の食事って、何を食べればいいのか迷っちゃうよね…

みどりん

分かる!実は糖尿病は”サイレント・キラー”って呼ばれてるんだ。自覚症状がないのに血管にダメージが蓄積していくから、まずは病院での治療が何より大事。でも、毎日の食事の工夫も本当に重要なんだよ

糖尿病治療の基本は、医療機関での診断と継続的な管理です。その上で、食事療法は血糖コントロールに欠かせない柱のひとつとされています。

2024年に発表された日本糖尿病学会の最新ガイドラインでは、従来の低脂肪食に加えて、低炭水化物食や低GI食、地中海食など複数の食事パターンが例示されており、画一的ではなく患者の状況や嗜好に応じた柔軟な選択が大切とされています(出典)。

さらに2019年に発表された大規模なネットワークメタ解析では、地中海食が2型糖尿病の血糖コントロールや体重管理において、低脂肪食よりも優れた改善効果を示したことが報告されています(出典)。

本記事では、日本のガイドラインと国際的な研究を踏まえ、糖尿病と食事療法の関係、そして地中海式食事を生活に取り入れる際のポイントをやさしく解説します。

糖尿病と食事療法をテーマに、みどりんとすずちゃんが食卓で話すイラスト

この記事でわかること

  • 2024年ガイドラインが示す糖尿病食事療法の新常識
  • 地中海食の血糖コントロール効果(科学的根拠付き)
  • 日本人向けの実践的な取り入れ方 ✓ 血糖値を安定させる食べ方のコツ
  • 医師による継続治療の重要性
目次

糖尿病における食事療法の重要性

糖尿病は「血糖値が高いだけの病気」ではありません。自覚症状がほとんどないまま全身の血管に負担をかけ、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全、失明などの重大な合併症につながることが知られています。そのため、血糖値を安定させる生活習慣、とくに毎日の食事の工夫は欠かせないポイントです。

すずちゃん

やっぱり食事って基本なんだね…

みどりん

そうだよ。薬や運動も大事だけど、“何を・どう食べるか”が血糖コントロールの土台になるんだよ

まずは「なぜ食事が大切なのか」を押さえたうえで、次に2024年の日本糖尿病学会ガイドラインが示す最新の食事療法について見ていきましょう。

2024年ガイドラインが示す糖尿病食事療法の多様化

糖尿病治療で推奨される食事パターンの種類を示した図

糖尿病の治療において、食事療法は薬物療法や運動療法と並ぶ「治療の柱」として位置づけられています。2024年に日本糖尿病学会が発表した最新ガイドラインでも、食事療法は【推奨グレードA・合意率100%】とされ、非常に重要であることが明記されています(出典)。

食事法の多様化が強調されている

従来は「低脂肪食を中心に」という考え方が主流でしたが、2024年のガイドラインでは一歩進み、患者さんの病態や生活習慣、嗜好に合わせて柔軟に選択できる複数の食事パターンが紹介されています。

具体的には以下のような選択肢があります。

  • 低炭水化物食:6〜12か月以内の短期間であれば血糖コントロール改善に有効(推奨グレードB)
  • 低GI食:食後血糖の上昇を抑え、HbA1cの改善につながる(推奨グレードB)
  • 地中海食:野菜・魚・オリーブオイル中心の食事で、複数の研究で血糖や体重に良い影響が報告
  • エネルギー制限(カロリー制限):特に過体重・肥満を伴う場合に強く推奨される(推奨グレードA)

「一律」から「個別最適化」へ

みどりん

昔は“糖尿病=低脂肪食”が基本って考えられていたんだけど、今は“その人に合った食事”を柔軟に選ぶ方向に変わってきているんだよ

すずちゃん

同じ糖尿病でも、人によって合う食事法が違うってことなんだね!

つまり、「一律の制限」から「個別最適化」へと考え方がシフトしています。

この背景には、「低炭水化物食や低GI食のように短期的に効果が出やすいもの」から、「地中海食のように生活習慣全体に良い影響を与える可能性があるもの」まで、科学的な根拠が少しずつ蓄積してきたことがあります。

重要なのは「どの食事法が最も優れているか」ではなく、「自分に合った方法を見つけて継続すること」です。エネルギー制限(カロリー制限)は推奨グレードAの基本的アプローチですし、低炭水化物食や低GI食も短期的な効果が認められています。

みどりん

地中海食も魅力的だけど、大切なのは”自分が続けられるかどうか”なんだよ

すずちゃん

確かに、どんなに良い方法でも続けられなきゃ意味がないもんね

次の章では、この中でも注目されている「地中海食」の科学的根拠を詳しく見ていきましょう。

地中海食は血糖コントロールと体重管理に有望【国際的エビデンス】

2024年ガイドラインで紹介された複数の食事法の中でも、地中海食(Mediterranean Diet)は国際的に注目されている食事パターンのひとつです。

ネットワークメタ解析による大規模比較研究

2019年に発表されたネットワークメタ解析(Journal of Evidence-Based Medicine)では、少なくとも5種類の食事法(地中海食、低炭水化物食、低脂肪食、通常の食事、高炭水化物食)を対象に、2型糖尿病患者における血糖コントロールや体重管理への効果が比較されました(出典)。

その結果:

  • HbA1c(過去2〜3か月の平均的な血糖値の指標:地中海食の方が低脂肪食より0.45%多く改善
  • 体重管理:地中海食の方が1.18kg多く減少
  • 脂質プロファイル:HDL(善玉)コレステロール上昇、中性脂肪低下など心血管にもプラス。
みどりん

面白いのは、地中海食は”血糖値だけじゃなく体重や脂質まで幅広く改善”を示したこと。糖尿病って血管の病気でもあるから、トータルで体に良い影響があるのは心強いよね

すずちゃん

なるほど!一つの食事法で色んな効果が期待できるのは魅力的だね

注意点:万能ではない

ただし、この研究も含め、すべての人に同じ効果が出るわけではありません。対象者の生活習慣や研究期間によって結果にばらつきがあり、「食事だけで糖尿病を治せる」わけではない点に注意が必要です。

したがって、地中海食は「糖尿病治療の一部として取り入れやすい選択肢のひとつ」と考えるのが適切です。

日本人でも続けやすい地中海食の実践法

地中海食は糖尿病の血糖コントロールや体重管理に有望とされますが、実際にどんな食事なのか気になる方も多いと思います。

実践のポイント(概要)

  • 野菜・果物、全粒穀物、オリーブオイルを毎日の食事に取り入れる
  • 魚介類や豆類を週に数回プラスする
  • ナッツやヨーグルトをおやつ代わりに活用する
すずちゃん

けっこう身近な食材でできそうだね!

みどりん

そうそう。しかも日本食とも相性が良いから、工夫次第で取り入れやすいんだよ

詳しく知りたい方へ

食材の選び方や日本人向けの工夫、健康効果をまとめた記事をこちらで詳しく紹介しています。
👉 【科学が証明】地中海式ダイエットの8つの効果|痩せる・健康になる実践法まで解説

血糖値を安定させる食べ方の工夫【ベジファースト・ゆっくり食べる・間食の工夫】

糖尿病の食事療法では「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も血糖値の安定に大きく関わります。小さな工夫を積み重ねることで、日常的に血糖コントロールをサポートすることができます。

ベジファースト(野菜から食べる)

  • 野菜や海藻、きのこ類を最初に食べると、食後の血糖上昇がゆるやかになります。
  • 食物繊維が糖の吸収を遅らせ、インスリンの働きを助けてくれるためです。
すずちゃん

最初にサラダから食べるだけなら、私でもできそう!

みどりん

そうそう。毎日の小さな積み重ねが大切なんだよ

ゆっくり食べて、よく噛む

  • 1口につき20〜30回を目安によく噛む
  • 箸を置きながら食べるとペースが落ち、血糖値の安定につながります
  • 早食いを避けることで、食べ過ぎの予防にも役立ちます

間食やおやつの工夫

  • 甘いお菓子やスナックは血糖値を急上昇させやすいため注意が必要です
  • 間食をするなら、ナッツ類・ヨーグルト・チーズ・ゆで卵 など、血糖値が上がりにくい食品がおすすめです
  • 「甘いものが少し欲しい」ときは、果物を食後に少量添えるなど、工夫次第で楽しむことも可能です
みどりん

“何をおやつに選ぶか”で、血糖値の安定度が大きく変わるんだ

すずちゃん

スナック菓子じゃなくて、ナッツやヨーグルトなら手軽だし続けやすそう!

⚠️ 注意点
これらの工夫はあくまで血糖値を安定させるサポートであり、糖尿病治療の代わりにはなりません。必ず医師の治療や指導とあわせて取り入れることが大切です。

食事療法だけでは不十分【医学的管理が必須】

糖尿病の食事療法は、血糖コントロールを助ける大切な柱のひとつです。
しかし、それだけで病気を完全にコントロールできるわけではありません。糖尿病は進行性の病気であり、薬物療法や運動療法、そして定期的な検査と医師の診断が欠かせません。

医師の診断と定期検査が必要な理由

  • 合併症の予防:網膜症や腎症、神経障害などは初期には症状が出にくく、検査でしか早期発見できません。
  • 薬の調整:血糖値や生活習慣の変化に応じて、薬の種類や量を調整する必要があります。
  • 安心して食事療法を続けるため:主治医に相談しながら取り組むことで、リスクを減らし、安全に続けられます。
すずちゃん

やっぱり食事だけじゃダメなんだね…

みどりん

そうだね。食事はすごく大事だけど、それを安心して続けるためにも“主治医との二人三脚”が欠かせないんだよ

⚠️ 注意点
本記事は研究やガイドラインをもとに食事の工夫を紹介していますが、糖尿病治療の基本は医師による診断と継続的な管理です。
必ず主治医と相談のうえで、日々の食事に活かしてください。

まとめ|小さな工夫で未来の血管を守ろう

糖尿病の食事療法は、薬や運動と並んで血糖コントロールを支える大切な柱です。
2024年の日本糖尿病学会ガイドラインでも、低脂肪食に限らず、低炭水化物食・低GI食・地中海食など多様な選択肢が紹介されています。

特に地中海食は、血糖値や体重管理、脂質改善に幅広い効果を示す研究が報告されており、日本の食卓にも取り入れやすい食事法のひとつです。しかし、最も大切なのは「自分に合った方法を見つけて継続すること」です。

エネルギー制限(カロリー制限)は基本的なアプローチとして推奨グレードAですし、低炭水化物食や低GI食なども選択肢があります。主治医と相談しながら、無理なく続けられる食事法を見つけることが成功の鍵となります。

さらに、ベジファーストやゆっくり食べる工夫、間食の工夫など、毎日の「ちょっとした食べ方の工夫」も血糖値の安定に役立ちます。

すずちゃん

難しいことじゃなくて、身近な工夫で未来を守れるんだね

みどりん

そうそう!小さな積み重ねが“血管の健康”を支える大きな力になるんだよ

⚠️ 最後にもう一度大切なこと
糖尿病治療の基本は、医師による診断と継続的な管理です。本記事はそのサポートとなる食事の工夫を紹介していますが、必ず主治医と相談のうえで取り入れてください。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会.
    糖尿病診療ガイドライン2024(第3章 食事療法).
    日本糖尿病学会,2024.
    https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/03_1.pdf
  2. Pan B, Wu Y, Yang Q, Ge L, Gao C, Xun Y, Tian J, Ding G.
    The impact of major dietary patterns on glycemic control, cardiovascular risk factors, and weight loss in patients with type 2 diabetes: A network meta‑analysis.
    Journal of Evidence‑Based Medicine. 2019 Feb;12(1):29‑39.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30070019/
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この記事を書いた人

薬剤師みどりんが、論文と専門知識をベースに、
30代女性の健康・美容・ストレスケアに役立つ情報をやさしく発信中🍀
医療現場での5年以上の経験を活かし、“本当に体にいいこと”を厳選してお届けします。
難しい話も、キャラと一緒にわかりやすく・実践できる形で紹介しています🐰

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